2016年7月27日に発売されたアルバム『あなたと共に生きてゆく ~由紀さおり テレサ・テンを歌う~』が、発売以来着実にセールスを重ね、9/26付オリコン週間アルバムランキングでは登場8週目にして遂にTOP100入り、ロングヒットの兆しが見えてきた。
同時に、テレサ・テンの各作品も再浮上。特に、2012年に発売された『ゴールデン☆ベスト テレサ・テン』は、2016/9/12付同アルバムランキングにて週間40位と前年までの最高位(79位)を大幅に更新。また、今年9月24日に由紀さおりがTBS系テレビ番組『サワコの朝』に出演した際、“今、心に響く曲”として紹介したテレサ・テンの「別れの予感」は、放送後にレコチョク歌謡曲/演歌ランキングの7位に急上昇し、CD、ダウンロード共に再ヒットしている。
今回ロングヒットしている由紀さおりのアルバムは、「時の流れに身をまかせ」「つぐない」「愛人」をはじめとしたテレサの日本語歌唱曲10曲にボーナス・トラックとして「つぐない(中国語バージョン)」を追加した全11曲を、由紀さおりが美しい日本語でカバーしている。
中でも注目は、生前のテレサのボーカルと、新録の由紀のボーカルで奇跡のデュエットを果たした「あなたと共に生きてゆく」だ。本作は、ZARDの坂井泉水が作詞、織田哲郎が作曲し1993年にテレサに提供された隠れた名曲だが、二人がデュエットすることによって、原曲のウェディング・ソングを超えて、“永遠の別れを迎えても、二人の想いは繋がっている”という壮大なバラードに生まれ変わっている。大切なパートナーや友人との永遠の絆を感じる人も多いのではないだろうか。
ピンク・マルティーニとの共演で日本のみならず、世界的にヒットしたアルバム『1969』を発表したのが2011年。実は、それ以前から、またそれ以降も新しい歌謡曲の発表に取り組み続けている。2009年に気鋭の小説家やミュージシャンとコラボレーションして21世紀版の歌謡曲をつくったアルバム『いきる』を発表、また2013年にはJ-POP界のヒット・プロデューサー松尾潔を迎え、海外の楽曲を日本語詞でカバーすることで新たな日本のスタンダード作りに挑んだアルバム『スマイル』を発表、さらに2014年と2015年には、日本の歌謡曲の美しさをもう一度伝えるべく、アルバム『VOICE』『VOICE II』にて1960年代から1970年代の歌謡曲カバーを発表している。
つまり、彼女がよくトーク中に発している「“嫌だ”と“やらない”は、ある時から言わないと決めた」というのを有言実行しているのだ。
その流れの中で作られた今回の新作も、きっと幅広い世代に長く支持されることが大いに期待できる。
文:臼井 孝(T2U音楽研究所)
■由紀さおり『あなたと共に生きてゆく~由紀さおり テレサ・テンを歌う~』
2016年7月27日発売
CD:UPCY-7149 \3,300(税込)
1.時の流れに身をまかせ
2.つぐない
3.愛人
4.スキャンダル
5.別れの予感
6.恋人たちの神話
7.空港
8.夜のフェリーボート
9.ふるさとはどこですか
10.あなたと共に生きてゆく duet with テレサ・テン
11.つぐない(中国語バージョン)※ボーナストラック